[カンボジア] リタイア後の移住先になりうるか

2023/08/08


リタイア後の移住先にカンボジアをお考えの方に、現地オンラインニュースKhmer Timesの記事をベースに、現状を見ていきましょう。


カンボジアでのリタイア、それは現実的な選択肢なのでしょうか。定年退職してカンボジアへの移住を検討する上で重要なテーマと、近年どのような改善や課題が生じているのかを再確認していきます。



安全性、安定性、手頃な価格


オーストラリアを拠点とする経済平和研究所(Institute for Economics and Peace)が毎年行っている調査では、2023年のカンボジアは、社会の安全・安心、現在進行中の国内・国際紛争の程度、軍事化の度合いなどを総合的に判断し、アジア太平洋地域の19カ国中13位、163カ国中73位にランクされました。


ランキング的としては輝かしいものではないですが、全体的にカンボジアは、全体としてカンボジアは比較的安全な場所だと言えます。犯罪の面では、日和見的な窃盗や交通事故は多いので、カンボジアに住む外国人は十分に気を付ける必要があります。


ちなみに、日本の外務省の海外安全ページの危険情報では、レベル1(十分注意してください)からレベル4(退避してください。渡航は止めてください)のうち、一番低い全土が「レベル1:十分注意してください」となっています。プノンペン都やシェムリアップなどの観光地においては、日本人を含め、外国人が被害者となる犯罪事案が多く発生していると注意を呼び掛けています。



インターナショナル・リビング(International Living)が毎年発表している「最も住みやすい場所」「最もリタイアしやすい場所」のリストで、残念ながら2023年は上位にランクインしていませんが、コロナ前の2019年はカンボジアが4年連続で「最もリタイアしやすい場所」に選ばれています。プノンペンのような都市で生活するために予想される毎月の費用の内訳も提示されており、月額約1,200米ドル程度と見積もられています。



2021年版のインターナショナル・リビング誌の年間グローバル・リタイアメント・インデックスで、カンボジアは最も手ごろなリタイア先として、エグゼクティブ・エディターのジェニファー・スティーブンス氏は、生活の質を向上させながら生活費を下げることができるのは重要な要素だとコメントしています。



一方、『世界幸福度報告書2023』(ギャラップ世界世論調査のデータを用いた持続可能な開発ソリューション・ネットワークの刊行物)では、カンボジアは137か国中115位となっています。



カンボジアは民主主義国家です。国連管理下で初めて民主的選挙が実施されてから今年でちょうど30年、7月23日に行われた総選挙では、有力野党キャンドルライト党の参加が認められない中で選挙が行われ、フン・セン首相率いる与党カンボジア人民党(CPP)が圧勝を宣言しました(暫定値で定数125のうち、およそ120議席を獲得)。民主主義の形骸化に懸念が示される中、27日には、カンボジアのフン・セン首相が40年近くにわたって務めてきた首相の座を退くと明らかにしました。来月10日までに長男が後継の首相に任命されるとしています。次の内閣は来月22日に発足する予定ですが、フン・セン氏は首相と同じ地位にある国王の最高顧問に就任するとしていて、権力を維持したまま「院政」を敷きたい考えとみられます。



医療・保険


まずは、カンボジアに自国の大使館・領事館サービスがあるかどうかを確認することが重要です。在カンボジア日本大使館はプノンペンにありますが、シェムリアップは日本国領事事務所があります。



万が一のために医療保険に加入し、緊急時には近隣諸国の有名な病院への医療搬送が含まれたパッケージに加入すると良さそうです。駐在員向けに販売されている保険の多くは、バンコクやシンガポールへの医療搬送をカバーしており、限度額は50万ドルから100万ドルとなっているようです。



首都以外の都市に目を向ける


海岸沿いの町ケップやカンポット、北西部のシェムリアップでは、ゆっくりとしたペースで生活することができ、プノンペンと比べて出費を抑えられることがあります。プノンペンほどのアメニティやより良い水準の医療・店舗などはないかもしれませんが、国外からの駐在員も多く住んでおり、必要な主要サービスが利用できるようになっています。



特にシェムリアップは、現在の空港と新空港(2023年後半に運用開始予定)へのアクセスが良く、人気の観光都市シェムリアップと首都プノンペンを結ぶ近代的な高速道路を作るためのフィージビリティスタディが現在進行中です。



規模の大きい都市であれば、トゥクトゥクやエアコンの効いた車を呼べる配車サービスアプリを利用することもできます。




リタイアしてカンボジアに住むなら不動産は購入か賃貸か

 
世界銀行は、カンボジアについて、コロナ禍の影響を受けた2020年以前の20年で、カンボジアは急速な経済発展を遂げ、2015年には低中所得国となり、2030年までには高中所得国になる兆しが見えていると述べています。建設、インフラ、テクノロジー、銀行、ショッピングなど、あらゆる面で発展し、今後も成長が見込めそうです。



カンボジアでリタイアを考える場合、主にコンドミニアムに限定して、外国人も不動産所有ができることになっています。賃貸も非常に手ごろですが、外国人の間では投資としての不動産購入が人気になっています。2022年のプノンペンの不動産の平均コストは約114,164USドル(約1,650万円)となっています。



投資を通じてカンボジア国籍を取得する選択肢もあります。これによりビザの更新は不要となり、土地を購入して所有することもできるようになります。「カンボジア・マイ・セカンド・ホーム」プログラムは比較的新しいものだが、カンボジアへの投資を考えている外国人が条件を満たせば、10年ビザ(いわゆるゴールデンビザ)を申請できるようになります。



東南アジア、特にカンボジアは、景色の変化、物価の安さ、生活のしやすさ、比較的自由で楽しい生活、医療の向上、合法的なビザの取得のしやすさ、そして現在進行中のインフラプロジェクトなど、リタイア先として検討するにあたって魅力的な要素があります。



(出所:Khmer Times、世界銀行、外務省

(画像:UnsplashのChetan Hireholiが撮影した写真)