[フィリピン] 4月の失業率、コロナ前のレベルまであと一歩

2022/06/16


フィリピンの失業率は改善を続けており、2022年4月、パンデミック中では最低の5.7%を記録しました。国家計画を担う国家経済開発庁(NEDA)は、対面の授業が再開されることで、さらなる雇用が生まれるだろうと強調しています。


フィリピン統計局(PSA)の最新の労働力調査(LFS)で、4月の失業率は、コロナの大流行が始まる前、2020年1月に記録された5.3%以来で最低となりました。4月の失業率は、276万人のフィリピン人が失業中であることを示しており、3月の287万人から減少しました。



▶労働力調査(LFS)2022年4月(出所:Philippines Statistics Agency



国家統計官デニス・マパ氏は、記者会見で、労働力人口は、人口の増加に伴って増加していることから、4月の失業率は統計的には、労働力人口が今よりも少なかったパンデミック前の約5%レベルにさほど遠くないと述べています。労働力人口とは、15歳以上で雇用状態にある、もしくは失業状態だが休職中である人々を指します。


マパ氏によると、4月に労働力人口に加わったフィリピン人は115万人で、うち99.3万人は就職できた一方で、15.7万人は職を見つけることができませんでした。


マパ氏は、労働人口に加わった人のほとんどが15歳から24歳の若者だったと加えています。その多くが、新卒者です。全体として、4月は、記録的な4,839万人のフィリピン人が労働力人口を構成していました。


厳しいコロナの規制が緩和され、経済が持続的に再開していることも、休職中の人がより多くの機会を得られることにつながりました。


NEDAは、その声明の中で、「対外的なリスクはあるものの、経済の約80%がアラートレベル1となり、全体の雇用はパンデミック前のレベルを超える310万人で推移した」と述べています。


しかし、NEDAはまた、「ロシア・ウクライナ紛争がもたらすサプライチェーンの混乱と、農業の季節要因により、労働力人口に加わったフィリピン人は少なめだった」とも述べています。労働力率は、3月の65.4%から63.4%に下がっており、3月から4月の期間で、130万人分の雇用の純減に換算されます。うち、110万は農業、50万はサービスでした。


マパ氏は、特に農業と小売業における季節雇用の減少が、労働参加率の前月比での減少につながったと説明しています。このような季節雇用は、パンデミックの期間はもちろん、パンデミック前でも、10%を超える比較的高い不完全雇用率の原因ともなっています。


4月、現在の仕事よりも長時間または賃金の高い仕事を探している「不完全雇用」状態のフィリピン人の数は、3月の742万人から640万人に減少しました。不完全雇用率に換算すると、15.8%から14%に下がったことになります。マパ氏は、不完全雇用率が高い状態は、特に、現在の収穫時期/夏季で、農業および小売業で一時的なニーズが高まっていることによると分析しています。


社会経済企画長官でNEDAのチーフでもあるカール・ケンドリック・チュア氏は、「石油価格の上昇および季節要因が、輸送業および農業に携わる労働者に影響を与え、仕事にいけない人も出ている」と述べています。


「これに対応するため、政府は、価格高騰を和らげるべく、最も影響を受けているセクターに対象を絞って補助金を出しています。」とチュア氏は話しています。


チュア氏によると、政府は、輸送業および農業に、61億ペソ(約152億円)
近い「対象を絞った補助金を展開」していると述べています。少なくとも50億ペソ(約125億円)は、公共事業ドライバー・事業者向けの燃料バウチャーで、「Pantawid Pasadaプログラム」のもと、それぞれ最低でも6,500ペソ(約16,240円)を受給することができます。


さらに、11億ペソ(約27億円)相当は、燃料の割引に充てられるということで、農業・漁業従事者に恩恵をもたらすでしょう。メトロマニラ、カラバルソン、中部ルソンでは、ジープニーの運賃が1ペソ引き上げられ、ますます上昇する燃料価格の「痛みを和らげる」だろうとチュア氏は述べています。


しかし、「対面授業が完全に再開されない限り、アラートレベル1の恩恵を完全に受けることはできないだろう」ともチュア氏は考えています。


これは、景気回復を促進し持続する、経済開発クラスターの10か条アジェンダを踏まえた、行政命令(Executive Order)No.166に掲げられている戦略にもあります。


チュア氏は、「対面授業を完全に再開しないと、学生を対象としたビジネスは閉鎖したままか、収容定員を減らして営業することになります。さらに、子どものオンラインスクールのサポートや管理する必要があるため、4分の1の保護者は仕事に行くことができません。よって、家庭の収入が限定されてしまう世帯が出てくるのです。」と話しています。


チュア氏はさらに、国内経済を強化し、子どもの教育および発展に投資することで、成長を加速させることに注力していかなくてはならない、というのも、未来の世代がよりよい雇用機会を確保するのに役立つからだ、と述べています。




(出所:Business Inquirer

(画像:Photo by Dan Kirk Formentera on Unsplash)