[フィリピン] 政府のチーフエコノミスト、フィリピン経済の回復に自信

2021/06/14

[フィリピン] 政府のチーフエコノミスト、フィリピン経済の回復に自信


フィリピン政府のチーフエコノミストが、長引くCovid-19パンデミックへの対策を強化していること、そして現在進められているワクチンの集団接種により消費者心理が回復し、今年は経済が成長軌道に戻るだろうと楽観的な見方を示しています。


社会経済・企画長官カール・ケンドリック・チュア氏は、パンデミックにより国は様々な困難を経て、「ようやくトンネルの終わりに光が見えてきている」と表現しています。国の企画機関である国家経済開発庁(NEDA)の長官も努めているチュア氏は、政府は、パンデミック初期、域内でも最も厳しいロックダウンを実施して経済活動の75%を止めた去年の失敗を繰り返さないようにしてきた結果、今年は「回復の兆しが見え始めている」と述べています。


チュア氏は、コミュニティ隔離措置を実施する際のリスク管理が改善されたこと、年末までにすべてのフィリピン国籍の成人にワクチン接種を行うことで、2021年の見直し成長目標である6~7%に手が届くようになると述べています。最近、フィリピンは一段階厳しい隔離措置に戻りましたが、多くのビジネスの営業を認め、労働者は最低限の衛生基準を守ったうえで生計を立てることができるようになっています。


チュア氏は、企業に営業を継続させつつ、「適切な時期に」隔離措置の制限を外していくことで、雇用や所得が戻ってくるだろうと述べています。


ワクチン接種の促進

ロックダウンの期間は、何百万としう職が失われ、何兆ペソという金額が失われました。


チュア氏は、全国規模の集団ワクチン接種プログラムを促進することで、消費者が外出して消費活動を行う自信を回復させるだろうと言います。


パンデミック以前、消費者支出は経済を支え、GDPの4分の3を占めていました。GDPは、2021年第1四半期、期待を下回る-4.2%となりました。家計の消費が、2021年の最初の3か月で4.8%縮小したこともその原因の一部です。


NEDAは、メトロマニラとブラカン、カヴィテ、ラグーナ、リサールの4州あわせたNCRプラスで最近実施されたより厳しい隔離措置にかかわらず、第2四半期はプラスの成長率を記録するのではないかと期待しています。


2021年第2四半期のプラス成長予測は、主に、昨年同時期に記録的なGDP-16.9%を記録したことのベース効果によるものです。


しかし、経済調査を行うムーディーズ・アナリティクスのエコノミストは、フィリピンの景気回復はアジア太平洋地域で最もゆっくりになると予測しており、パンデミック前のGDPレベルに戻るのは2022年の第3四半期だとしています。


ムーディーズ・アナリティクスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、スティーブン・コクレーン氏は、フィリピンは域内で「最もCovid-19を管理できなかった」、地域のサプライチェーンと密接にかかわっていなかったために世界輸出の回復の波に乗れなかった、と述べています。


ムーディーズ・アナリティクスのデータによると2021年3月、4月のアジア太平洋地域各国の輸出額が2019年末レベルを越えているのに対して、フィリピン、日本およびニュージーランドからの出荷分についてはまだ回復しきっていません。


コチレーン氏は、フィリピン、インドネシア、台湾、タイ、そしてベトナムについては、「集団免疫」つまり成人人口の65%に予防接種を完了するのは2023年以降になるだろうと予測しています。


コチレーン氏は、フィリピンとインドネシアの集団接種について、まずは最初の段階で十分なCovid-19ワクチン供給を確保できなかったこと、さらに接種プログラムの実施が遅いことで、困難に直面していると指摘しています。


ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、カトリーナ・エル氏は、フィリピンは景気回復で後れを取っただけでなく、比較的余裕がある過程は在宅勤務ができたのに対して、多くの貧困層のフィリピン人は生活の糧を失ったために所得格差が広がった影響も受けていると説明しています。


2021年5月末、ムーディーズ・アナリティクスのは、フィリピンの2021年のGDP成長率予測を、政府の目標枠を下回る5.3%に下方修正しています。



(出所:Business Inquirer

(画像:Image by Marc Pascual from Pixabay )