[フィリピン] 次期マルコス政権、インフラ整備と税制改革迫られる

2022/05/17


ドゥテルテ大統領は、任期の終わりまでには、3億6,520万ペソ(約8.9億円)相当の旗艦インフラプロジェクト40件を完了させる予定です。ドゥテルテ政権の経済担当チームは、マルコスJr.政権にも、インフラ開発を引き継いでほしいと思っているようです。


「回復に向けて、事業費ではなく、インフラ投資のみを賄えるように財政赤字のレベルを下げていくべきです。借入金が長期かつ生産性の高い投資の必要資金を賄い、民間投資を押し出すことを防ぐのにつながるでしょう。そうすれば、経済活動と収益を長期的に高めることになります。負債も、負債の返済も、コントロール可能なレベルまで落とすことで、財政再建の余裕ができるはずです。」と、カルロス・ドミンゲス財務相が議長を務める経済開発クラスター(EDC)のレポートでは述べられています。



「次の政権は、累積した負債の、我が国の国内総生産(GDP)に占める割合を小さくしていかなければなりません。そのためには、ドゥテルテ政権下のように、経済が6%よりも高い割合で成長する必要があります。この目標は、小売自由化法、外国投資法、公共サービス法の改正といった重要な改革の実施はもちろんインフラプログラムによって、達成可能になりました。」と、EDCは、インフラの黄金時代を開くことを目的とした「ビルド・ビルド・ビルド」について触れています。



ビルド・ビルド・ビルド

ドゥテルテ政権下では、2016年7月から2022年3月までの間で、小規模なプロジェクトも含め「ビルド・ビルド・ビルド」の資金調達をすべく、中国、日本、韓国などの二国間パートナーはもちろん多国間貸付機関から、37本の低金利借入、123.4億ドル(約1.6兆円)が行われました。いわゆる「旗艦プロジェクト」には、政府は、28本の譲与的融資契約で111.8億ドル(約1.4兆円)を調達しています。


ドゥテルテ政権の「ビルド・ビルド・ビルド」の計画には、119件の大規模インフラプロジェクト、4.7兆ペソ(約11.5兆円)が含まれています。その工事費および数の半分は、政府開発援助(ODA)の融資および補助金で賄われる予定です。


EDCは、この旗艦プロジェクトのうち、11プロジェクト1,267億ペソ(約3,110億円)はすでに完成済みで、29プロジェクト2,385億ペソ(約5,856億円)は2022年末までに完了予定だとしています。


EDCは、ドゥテルテ政権の包括的税制改革プログラムにより、政府の財源に5,758億ペソ(約1.4兆円)が追加され、国家予算で展開されている「ビルド・ビルド・ビルド」プロジェクトの資金調達に役立ったとも述べています。


「過去の政権下では、GDPの約1.6%が支出されたのに対して、今回の政権はインフラ支出を、過去4政権のレベルの2倍となるGDPの5%超にまで引き上げることに成功しました。」


財務省から次期大統領フェルディナンド・マルコスJr.の経済担当チームに提出されることになっている財政再建計画には、包括的税制改革プログラム第2弾も含まれることになります。



財政再建

概して、財政再建には、増税または新税、優先順位の高くない予算項目の削減、経済成長のドライバーが、長引くパンデミックのなか累積した記録的な公的債務の返済がつきものです。



最新の財務局のデータによると、2022年第1四半期に、政府が支払った債務は3,137億ペソ(約7,702億円)と、1年前の5,215億ペソ(約1.3兆円)から減少しました。金利の支払が増えたものの、分割弁済分が減少したことによります。


今年のフィリピンの債務返済額が減った一方で、予算の資料では政府は今年1.3兆ペソ(約3.2兆円)の債務の返済を行う予定です。うち、7,852億ペソ(約1.9兆円)相当は元金、5,126億ペソ(約1.3兆円)が金利の支払に充当されます。


エコノミストたちは、負債レベルをフィリピンのような新興市場で管理可能とされる60%以下に下げる財務再建が、生産性支出、特にインフラ開発に影響を与えるのではないかと心配していました。GDPに対する負債比率は、2022年第1四半期末時点では、63.5%に達しています。


内閣レベル開発予算調整委員会は、今年12.9億ペソ(約32億円)(GDPの5.8%)をインフラ開発に充てる計画です。


マルコスJr.政権として最初の一年となる2023年、地方政府の予算の取り分について定めた最高裁判所のマンダナス-ガルシア裁定のもと地方政府により大きな予算が割り当てられていたこと、さらにバンサモロ自治地域の包括的予算もあり、公共インフラ支出にはやや少ない1.28兆ペソ(約3.1兆円、GDPの5.3%)が割り当てられていました。


2024年、政府のインフラ支出は、1.35兆ペソ(約3.3兆円、GDPの5.1%)にまで達する予定で、今後3年のインフラ支出は、平均してGDPの5.4%になるとEDCは述べています。




(出所:Business Inquirer

(画像:Photo by Nikko Balanial on Unsplash )