[ベトナム] 日本企業が不動産業界のM&Aをリード

2020/06/19

[ベトナム] 日本企業が不動産業界のM&Aをリード


2020年最初の5か月では、日本企業によるM&Aの取引が活発に行われましたが、新型コロナウィルス(Covid-19)の長期的な影響により後半期の不動産市場のM&Aは不透明です。


2020年1月、三菱商事と野村不動産は、ヴィンホームズ(Vinhomes)社のグランド・パーク・プロジェクトの株式の80%を取得し、グランド・パーク・プロジェクトの第 2 期開発(敷地面積:26ha、用途:1 万戸超の分譲住宅、総事業費:約 1,000 億円、竣工・引渡時期:2022 年度内)への参画を決めました。ホーチミン市は 9 区及びその周辺にハイテクパークや工業団地の積極的な誘致を進めていることから、引き続き人口増加に伴う旺盛な住宅需要が見込まれています。


三菱商事と野村不動産のプレスリリースによると、グランド・パーク・プロジェクトは ヴィンホームズ 社が進めている全体敷地約 271ヘクタールのタウンシップ開発(2023 年に全区画完成予定)であり、オフィス・住宅・スポーツ施設・商業施設・学校・病院・公園などの都市機能を充実させ、居住人口 20 万人が集う街を新たに創造するプロジェクトです。グランド・パーク・プロジェクトは、ホーチミンシティ 9 区に位置し、ホーチミン中心部から直線距離で約 20 ㎞(車で約 40 分)にあり、ロンタインハイウェイ・ハノイハイウェイ・環状 3 号線(2021 年開通予定)等の道路ネットワークの更なる整備が進む交通利便性に優れた立地に所在しています。


三菱商事にとって、ベトナムにおけるM&Aは初めてではありません。2016年、ハノイ市中心部から南西に8kmのホアンマイ区において、ベトナム企業Bitexco社が進める住宅、商業、オフィス、学校、スポーツ施設等の大規模複合開発事業「ザ・マノー・セントラル・パーク(The Manor Central Park)」にも参画しています。ザ・マノ―・セントラル・パーク・プロジェクトの計画面積は90ヘクタール、政府による一体整備が計画されている公園の面積100ヘクタールを加えると、ハノイ市最大の不動産開発事業です。分譲住宅開発においても低層棟約1,000戸、高層棟17棟・約7,700戸と最大規模が計画されています。三菱商事は、Bitexco社と合弁会社を設立し、分譲住宅開発計画のうち、第一期計画となる低層棟240戸、高層棟2棟1,036戸に参画しました。ホーチミンシティにおいては、三菱商事は地場のフック・カン・グループ(Phuc Khang Group)が手掛ける複数プロジェクトにも参画しています。


一方で、野村不動産は、ホーチミンシティの中心に、オフィスビル「ゼン・プラザ(Zen Plaza)」に加えて、「サンワータワー(Sun Wah Tower)」の持分24%も取得しました。野村不動産は、フーミーフン・デベロップメント社とも提携し、7区のミッドタウン・フーミーフン・コンプレックスの開発にも参画済みです。2028年3月までの新・中長期計画によると、野村不動産は、タイ、ベトナム、フィリピン、中国を含む海外ビジネスに約3,000億円を投じていく計画です。


その他では、長谷工コーポレーションもまた、2020年5月にベトナムの建設会社エコバ(Ecoba)の株式の36%を引き受けています。長谷工コーポレーションは、日本のマンション・アパート総戸数の約10パーセントに相当する、約58万戸を建設してきました。


Vietnam Investment Review紙の取材に対して、M&Aサポートを行うベトナム・レコフ社(Vietnam RECOF Corporation)のクロスボーダー部門ヘッド兼CEOの吉田 正高氏は、ベトナムに進出している日本の投資家には2タイプあると話しています。


1つは法人レベル、特に不動産デベロッパーに投資するタイプ、もう1つは特定の開発プロジェクトに投資するタイプです。一般的に、日本人は後者を好む場合が多く、その理由としては、プロジェクトの方が管理しやすく、また見える化しやすいからだと言います。一方で、企業の内部をすべて見ることは難しく、潜在的なリスクも高くなると、吉田氏は指摘しています。


吉田氏は、今後の日本企業による投資の増加は、ベトナムデベロッパーの戦略、地価、そして当局の認可スピードと量次第であると考えています。



■順調なすべり出し

2020年の1月~5月に行われたM&Aで、ベトナムの不動産市場には、外国の投資家が前向きなしるしが見て取れます。

不動産コンサルティング会社ソーホー・ベトナムのファン・シュアン・カン会長は、M&Aをするならベストは市場が危機にあるときだと言います。カン会長には、多くの個人・投資ファンドから、新しいアセット、特にオフィスビル、中小規模のホテルやリゾートを探してほしいとのオーダーが入っているようです。

総合不動産サービス会社JLLベトナムのカントリーヘッド、ステファン・ワイアット氏は、投資家の中には、Covid-19の影響で投資判断を躊躇する者もいるだろうが、ベトナムの投資テーゼと主要なファンダメンタルズは、今後もポジティブだと話しています。「国内外の投資家は、特に工業不動産、オフィス、レジデンシャルにおけるオポチュニティを求めています。ベトナムのパンデミックに対する迅速な対処は、確実にベトナムを新たなレベルへと導きますので、渡航制限が解除されれば投資ボリュームもすぐに増えてくるだろうと予想しています」とワイアット氏は述べています。


■今後は不確実性も

2020年1月~5月の市場は前向きなサインを見せてきたものの、今年の後半には不確実性も残ります。

レコフの吉田氏は、2020年後半のM&A活動については、パンデミックのネガティブな影響と、国やセクターによって出方が異なる景気回復へのニーズとの間で調整が起こるため、予想するのは容易ではないと話しています。

「それに加えて、市場が乗り越えなければならないハードルは、投資家が将来の投資先を検討することを物理的に困難にする、各国の国境における厳しい制限だけではなく、2021年前半の選挙の結果を見てからにしたいというローカル側の思惑もあります」と吉田氏は話しています。

これについて、吉田氏は、日本の投資家がさらに2つのグループに分けられると言います。1つ目のグループは、嵐が去るまで「様子見をする」従来の方法を取りたいタイプ、もう1つのグループは、競争相手が少ないときにチャンスをつかもうとするグループで、吉田氏の顧客の中ではこちらのグループが増えてきているようです。この理由は、安く買いたいからではなく、域内で事業拡大するにあたってより幅広い選択肢から最適なパートナーを探したいからだということです。


(出所:Vietnam Investment Review、三菱商事野村不動産長谷工コーポレーション

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(トップ画像:Quang Nguyen vinh from Pixabay)