[ベトナム]企業移転増加で工業不動産の需要高止まり

2020/08/28

[ベトナム]企業移転増加で工業不動産の需要高止まり


安い労働力、安定した政治環境、そして世界でも成長めざましい経済が、ベトナムは魅力的な投資先にしています。


ベトナムを拠点として投資サービスを提供するベトドラゴン・セキュリティーズ社によると、米中貿易戦争、公共投資の拡大、そして新しい自由貿易協定により、多くの企業がサプライチェーンの多様化と生産移管のためにベトナムの工業団地に移転してきており、工業不動産の賃貸需要を押し上げています。


高まる環境圧力が、多くの中国・外国の多国籍企業に工場を東南アジア移転を迫りました。さらに重要なことは、そのような企業の多くは、米中貿易戦争の激化によるビジネスリスクをオフセットしようとしていることです。


加えて、安価な労働力と安定した政治環境を備え、世界で最も急成長する経済の一つということが、ベトナムを魅力的な投資先とする要素となっている、と同社はレポートで述べています。


現在、ベトナムの推定労働コストは、中国の52%、およびASEAN競合3か国(タイ、インドネシア、マレーシア)平均の64%に相当します。


▼図1:対外直接投資(FDI)(単位:10億USドル)、図2:FDI増加率、省別(%)


2020年1月~7月で、外国直接投資(FDI)認可ベースは前年同期比で6.9%減の188.2億USドル(約2兆円)となりました。製造・加工業に引き続き投資資金が集中、投資額は89.6億USドル(約9,490億円)以上、外国直接投資の登録ベースで47.6%を占めました。


これらの資本の大半は、北部ではハノイ、バクニン省、南部ではホーチミン、ドンナイ省、ビンズオン省の工業団地や経済特区に流れ込んでいます。


▼図3:月額最低賃金(月あたりUSドル)、図4:ビジネスのしやすさ(ランキング)


工業団地のオーナーにとっては繁栄の一年


賃貸需要の高まりに伴い、賃料も2019年末と比較して現在は10%増加しました。ベトドラゴン・セキュリティー社は、賃貸需要は今後も高止まりするとみています。


よって、工業団地のデベロッパー、特に大規模で利用可能な土地をかかえているようなデベロッパーにとっては繁栄の一年になるだろうと同社は述べています。


北部では、バクニン省とハイフォン市が、供給量の多さから工業不動産市場で目立っています。キンバク・シティー・ディベロップメント社とビグラセラ社が、それぞれ900ヘクタール、1,150ヘクタールという広大な賃貸用地を抱えています。こうした土地が、北部の工業用地の大部分を占めており、バクニン省やハイフォン市などを中心に有利な立場を展開しています。広大な土地を背景に、キンバク・シティー・デベロップメントやビグラセラは、電子部品・付属品のFDI企業からの賃貸需要をより取り込めるようになりそうです。


▼図5:在庫量と稼働率、図6:平均の土地・工場賃料


一方で、利用可能な土地の不足が南部では問題になっています。現在の高い稼働率に加えて、供給量が限られているからです。コロナにより一時的に厳しい状態になっているかもしれませんが、工業用スペースの需要は確実にあります。ベトナム南部の工業用地の平均価格は、賃貸期間につき平米あたり106USドル(約11,200円)で、JLLのレポートによると前年比で9.7%増となっています。


力強いファンダメンタルに支えられ、ベトナムは投資家の関心を集めてきました。このような投資家たちは、地元の工業デベロッパーとの合弁や、開発用地や営業資産を取得を積極的に検討しています。


南部のインベストメント・アンド・インダストリアル・デベロップメント社およびフォックホア・ゴム社は、それぞれ1,000ヘクタールを超えるような広大な工業用地をビンズオン省に持っています。主なテナントは、国内企業、外国投資企業も含めて、材木関連です。物流、電気、機械、材木、消費財など様々な業種のテナントが入居しています。


ソナデジ・チャウドゥック社もまたバリア=ブンタウ省に大きな賃貸用地があります。コアビジネスのおかげで、第3四半期の賃貸収入が前年同期比で30%増加しました。

 

ベトナムには、2020年6月末現在336の工業団地、合わせて約97,800ヘクタールがあります。うち、261が稼働中で、75が更地化および建設段階です。稼働中の工業団地の稼働率は76%に達しています。


加えて、ベトナムの沿岸部に17の経済特区があり、陸海面合わせて約845,000ヘクタールもの面積があります。

(出所:Hanoi Times

(トップ画像:Photo by Troy Mortier on Unsplash )