[フィリピン] 中銀利上げサイクル休止、約1年ぶり

2023/05/25


2023年5月18日に開催された金融政策決定会合(Monetary Board)で、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas (BSP))は、の翌日物のリバースレポ金利を6.25%に据え置く決定をしました。同時に、金利コリドーの下限と上限を定める翌日物の預金金利と貸出金利は、それぞれ5.75%と6.75%に据え置かれました。今回の決定は、市場アナリストの間で広く予想されていたものでした。




BSPが「慎重な休止(prudent pause)」と表現する今回の利上げサイクルの休止は、今年のインフレ予測が緩やかになったこと、インフレ期待が軟化したこと、内需が冷え込む兆しがあることを背景にしたものです。BSPは、2023年の総合インフレ率が平均5.5%となり、従来の目標値6.0%から低下すると見ており、今年第1四半期の需要指標は、金融政策の引き締めが経済活動をやや抑制し始めたことを示唆しています。食料供給圧力の緩和を目的とした政府の広範な政策もまた、物価圧力のさらなる緩和への期待が高まり、BSPの利上げ一旦停止を促しました。



BSPはその声明の中で、「インフレに対する新たな脅威に対応する用意がありながら」、利上げを一時停止することを示唆しました。とはいえ、BSPは、継続する物価上昇圧力を抑制するため、短期的には現在の金利水準を維持すると見ています。中銀のフェリペ・メダーリャ総裁はブルームバーグとのインタビューで、米FRBが利下げを開始すれば政策スタンスの緩和を検討すると述べたが、2023年には想定していないと付け加えています。



コンセンサスは、主要政策金利が現在の水準で年内を終えるとしています。次回の金融政策決定会合は6月22日に開催される予定です。



野村證券のエコノミスト、ユーベン・パラクエレスとランガ・クピタは、この見通しについて、この5月の決定がBSPの利上げサイクルの終わりを意味すると考え、政策金利は2023年後半から2024年前半まで6.25%で据え置かれると予想しています。BSPは、声明の中で、金融引き締めを再開する可能性についても示唆していますが、総合インフレ率が下降トレンドにある可能性が高いことから、その可能性は低いと考えていると述べています。さらに、BSPが政策金利の引き下げを開始する時期について、2024年3月ごろを予想しており、同社の米国経済チームは、その時期にはFRBの緩和を開始する予想であるということです。




(出所:Focus Economics

(画像:UnsplashのMarkus Spiskeが撮影した写真 )