東南アジアのREIT(マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム)

2021/07/30

東南アジアのREIT(マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム)


不動産投資をリート(REIT・上場不動産投資信託)で行うことは日本でも少しずつ一般的になってきました。本日は、東南アジアのリートに目を向けてみましょう。


■マレーシア


マレーシアのREITの始まりは、20年ほど前にさかのぼります。1989年、Amanah Harta Tanah PNB 2が、「Property Trust(不動産信託)」として初めて上場し、Arab Malaysian First Property Trust(AMFPT)が続きました。しかし、この不動産信託は、マレーシア市場では盛り上がりを見せませんでした。転機が訪れたのは、2005年、REITとその名を変え、マレーシア証券取引委員会が、REITのモニタリングを強化していくための、法的な枠組みを整備するガイドラインを導入してからです。


マレーシアには、「イスラムREIT(Islamic Reit)」と呼ばれるものがあります。イスラムREITは、「イスラム不動産投資信託のためのガイドライン(Guidelines for Islamic Real Estate Investment Trusts)」によって規制されています。イスラムREITのしくみは、従来のREITとほぼ同じですが、イスラムREITは、イスラム法「シャリア(Shariah)」に則ることが求められます。シャリアを遵守していることを確保すべく、イスラムREITのしくみには、追加の組織として、シャリア委員会(Shariah Comittee)というものがあります。この委員会の機能は、シャリア関連の事項に関する助言を与え、イスラムREITの運営と活動が、確実にシャリアに従うようにするものです。


従来のREITと違って、イスラムREITは、テナント(またはその大多数)がシャリア原則に合致した許可される活動を行っている不動産にのみ投資することができます。したがって、イスラムREITの不動産取引は、アルコール、タバコ、ギャンブル、ハラルでない食品(豚肉など)を扱うなど、非倫理的とみなされる活動を行うテナントからの所得が、全体の収益の20%を超えないことになっています。


現在、マレーシア証券取引所には、17社のREITが上場しています。うち、4社がイスラムREIT(*)です。


Covid-19パンデミックの影響への対応として、マレーシア証券取引委員会は、2020年8月12日、マレーシアREITのためのギアリング限度を、50%から60%に一時的に引き上げることを発表しました。この措置は2022年12月31日までとなります。2021年6月末の時価総額は、376億リンギット(約9,720億円)です。(出所:Bursa Malaysia


▼Bursa Malaysia REIT Index過去1年(出所:shareinvestor.com



■タイ


タイで始めてREITが上場したのは2014年で、比較的発達したREIT市場があります。最初のREITは、不動産デベロッパー、バンコクランド(Bangkok Land)のImpact Growth REITです。バンコク北部郊外にある、ASEAN最大のコンベンション・エキシビションコンプレックス「インパクト・ムアントンタニプロジェクト」(122,165平米)の資産を保有するものです。(出所:Asia Nikkei


現在、タイ証券取引所には60のREITとETFがあり、うちREITは25社です。(出所:SET


2021年6月16日付のBangkok Postによると、5月21日時点で、タイREITの値動きを反映するインデックス、SETPREITは、パンデミック前レベルの30%近く下あたりを推移しています。パンデミックにより大きな打撃を受けた、ホスピタリティおよびリテール不動産によるところがかなり大きくなっているということです。


▼世界/タイREITの2021年値動き(出所:Bangkok Post



■インドネシア


インドネシアのREITは、2007年に「集団投資契約形式での不動産投資ファンディング (Dana Investasi Real Estat Berbentuk Kontrak Investasi Kolektif or "DIRE")」という形で整備されました。DIREスキームで設立されたREITは、不動産資産、不動産関連資産、現金および現金同等物への投資のために投資家から資金を調達することができました。


規制が整備されてから何年もたちますが、インドネシアREITは、物件の売却にかかる税率の高さと、二重課税の問題から、あまり人気が出ませんでした。


2015年11月、インドネシア政府は、REITにかかる税金インセンティブを出しましたが、現在上場しているREITは3つです。(出所:インドネシア証券取引所

最も最近上場したのは、2019年7月のDIRE Simas Plaza Indonesiaです。現在ポートフォリオには、Grand Hyatt Jakarta(ホテル)、Plaza Indonsia Shopping Center(プレミアムショッピングモール)、The Plaza Office Tower(オフィス)、fX Sudirman(中所得向けショッピングモール)の4件があります。



■ベトナム


ベトナム法の下では、信託というコンセプトが存在しませんが、証券に関する新しい規制により、2013年7月から、投資家はファンド管理会社により運営されるファンドを設立して、不動産に投資することができるようになりました。これが、REITがREIFと呼ばれる所以です。しかし、このタイプの事業は、いまだ多くの投資家を集めるに至っていません。(出所:Thomson Reuters


2015年、TCREITがホーチミン証券取引所に上場し、ベトナム初のREITとなりました。管理するのは、Techcom Capital(TCC)です。このREITは、証券コードFUCVREITです。これが、ベトナム唯一のREIFです。


AsiaPropertyHQによると、2017年時点での、TCREITの純資産価額は503億ベトナムドン(現金175億ドン、株式327.7億ドン)でした。総資産価額の65%が不動産株式となっています。


TCREITは、コロナウイルスが始まった2020年は、5,000ドンから8,400ドンの間で取引されました。2020年末時点の価格は、7,000ドンを少し越えたところとなりました。(出所:Market Watch