[マレーシア] 2023年予算、不動産セクターに関連する内容は?

2022/11/01


2022年10月20日、マレーシア選挙委員会は、11月19日に総選挙を実施すると発表しました。


イスマイル・サブリ首相は同月10日に議会を解散し、総選挙の実施で政治の安定化を図るとしています。

野党勢力がまとまりを欠く中、与党の統一マレー国民組織(UNMO)が優位とされています。UNMOは汚職問題を抱えていますが、経済情勢が不透明なことから、有権者はなじみのある政党を選ぶとみられています。


アナリストは、有権者の無関心や、モンスーンシーズンのため、投票率は低いと予想しています。



一方で、マレーシア政府は、総額3723億リンギットの2023年予算案を発表しました。昨年のCovid-19特別支援を除くと、過去最高水準です。


11月19日に行われる予定の総選挙を前に、与党への支持を集める狙いがあると見られています。


2023年予算案の中でも、不動産業界に直接影響を及ぼす項目について見ていきましょう。



印紙税の減免

■特別な間柄での愛情の証としての不動産譲渡にかかる印紙税減免


現在、不動産の譲渡にかかる書類について、夫婦間の愛情の証としての不動産譲渡における印紙税100%免除ですが、親から子または子から親への譲渡(マレーシア人にのみ適用)における印紙税は50%免除となっています。


印紙税の取り扱いを整理すべく、2023年予算では、夫婦間・親子間・祖父母と孫の間での愛情の証としての不動産譲渡にかかる書類については、印紙税を10リンギットとすることが盛り込まれています。ただし、不動産を譲り受ける者がマレーシア人であること、譲渡の書類が2023年1月1日移行に締結されていることが条件となります。



■初めてのマイホーム購入のための印紙税免除

現在、売買契約が2019年1月1日から2025年12月31日に締結されていることが条件に、マレーシア人が、50万リンギットまでのマイホームを初めて購入する場合、その譲渡書類と融資契約にかかる印紙税が100%免除されています。


50万リンギットから100万リンギットまでの住宅については、現在50%免除となっていますが、今回の提案では、この価格帯の物件を初めてのマイホームとして購入し、2023年12月31日までに売買契約が締結されていれば、75%免除にする提案がなされています。



■ローンその他資金調達の借り換え./
繰り延べの書類にかかる印紙税の減免

現在、2022年1月1日から2022年12月31日の期間で、債務者と金融機関の間で締結されたローン/資金調達契約の借り換え/繰り延べに関連する契約書類にかかる印紙税は100%免除です。2023年予算では、この免税をさらに2年間延長し、2023年1月1日から2024年12月31日までに締結されたローン/資金調達契約にも適用するよう提案されています。


■政府の住宅プログラムのための資金割り当て

2023年予算では、地方における住宅の新築および改装のための資金割り当てを、3億6,100万リンギットから4億6,000万リンギットに増額する提案がなされています。


サバ州、サラワク州では、住宅を新築する際の資金援助が、1ユニットにつき、68,000リンギットから79,000リンギットに引き上げられました。これにより、サバ州、サラワク州では、新築の住宅が3,000戸ほど増えるとみられています。


3億6,700万リンギットはトレンガヌ州マラン、ペルリス州アラウの新規開発を含む、市街地の住宅プログラムに充てられることになっています。これにより、12,400人が恩恵を受けるとされています。


従業員給付基金(EPF)もスンガイ・ブローの「クワサ・ダマンサラ」タウンシップ開発を継続して行っていきます。投資額は、2025年までで30億リンギット、6,000人以上の雇用を生み出すことが期待されています。



■住宅信用保証スキーム

予算には、住宅信用保証スキームのもと、保証に30億リンギットを充てることが提案されています。



■インフラ支出

政府は、2023年の開発予算を、2021年の640億リンギット、2022年の756億リンギットから、2023年には950億リンギットに増やすことを提案しています。増加分は、パン・ボルネオ高速道路、ジェマス-ジョホールバルのツイン高速道路、東海岸レイルリンクプロジェクト(ECRL)、ジョホールバル-シンガポール高速トランジットシステム(RTS)、セントラル・スパイン高速道路に加えて、MRT2号線・3号線プロジェクトなどに振り分けられる計画です。



上記の通り、2023年予算には、不動産セクターに直接的な影響をもたらすような提案はあまり盛り込まれていません。50万リンギットから100万リンギットまでのレジデンシャル不動産にかかる印紙税免除の上限を50%から75%にすることについては、この条件に当てはまる物件を購入しようとしている人々からは歓迎され、購買意欲が高まりそうです。



しかし、この印紙税の減免が適用されるのは初めてのマイホームを購入する人のみということで、50万リンギット以上の物件を初めてのマイホームとして購入できる人はあまり多くないことが考えられるため、不動産販売を大きく押し上げることはなさそうだと考えられています。この減免がすべての購入者に対して適用されるのであれば、より効果的に市場を刺激できそうです。



2023年予算は、選挙の年の予算ということもあって、B40、M40と呼ばれる低中所得層向けの特典が盛り込まれています。皮肉なのは、11月19日の選挙のあとに結成される政府が、この予算案を上げた政府と異なる場合は、再び審議され、承認に至ることがないかもしれないことです。今のところは、選挙のほとぼりが冷めるのを待つことになりそうです。




(出所:Reuters, Asia NikkeiNew Straits Times

(画像:UnsplashのAlex Blockが撮影した写真)