2018/03/01
マニラの投資環境と新規プロジェクト2018年(第1四半期)
メトロマニラ
マニラは、国家の首都としてだけでなく、180万以上の人口を抱える地球上でも最大級の都市のひとつとして、重要な地位を占めていることはあきらかです。マニラにはたくさんのエリアがあり、それぞれの価格、雰囲気、良いところ、悪いところがあります。
メトロマニラは、一つの都市というよりは、いくつかの都市の集合体です。ケソンシティ、マカティ、およびタギッグが特に多くのコンドミニアムが集まる近隣都市です。
これらは、多くの上流階級のローカルや外国人が住居を構える地域です。多国籍企業が中央ビジネス地区を構えて、フィリピンの経済をけん引しています。これらの技術系企業、サポートプロバイダ、その他フィリピンにアウトソーシングを行う企業のために、中流階級も形成されています。彼らもまた、職場に近い場所に位置するコンドミニアムに住むことを好みます。
しかし、メトロマニラの中心地から少し離れたところにもまだコンドミニアムはあります。ケソンシティは、面積的にも大きくマニラに続くフィリピン第2の都市です。デベロッパーは、ケソンシティのような場所に中間レンジのプロジェクトを建設する傾向にあります。
2018年不動産予測
Colliers*の不動産業界の2018予想トップ10の中でもマニラ関連の予想についてご紹介しましょう。
■メトロマニラのコンドミニアムリースは厳しい状況が続く
メトロマニラのコンドミニアム賃貸状況は厳しい状態が続いています。ビジネスエリア、その周辺エリアともに新規コンドミニアムの完成が相次いだためです。2017年第3四半期、全体の空室率は、前年の11.7%から12.7%に上昇しました。次の12か月で、さらに21,000ユニットの完成が見込まれていますので、空室率は14%~16%に上昇するものと思われます。中心部周辺エリアの完成物件も増えていますので、全体空室率を持ち上げています。一方で、国土開発および地元のデベロッパーは、ルソン(例:メトロマニラ)、ヴィサヤ諸島、ミンダナオの主要都市部での住宅プロジェクトの需要が増えてくると積極的にアピールしています。道路網の整備および空港の拡張により、これらの地域の活用が見えてくるため、住宅プロジェクトがより実現可能となるためです。これらの地域における住宅用ユニットの需要は、成長を続けるものと見込まれます。というのも、海外で出稼ぎするフィリピン人労働者からの送金のかなりの部分が、フィリピンでの住宅資金に蓄えられていると考えられるからです。Colliersは、デベロッパーが、フィリピン国内の、第2、第3の都市での住宅プロジェクトにますます投資をすることを期待しています。これらの都市の需要は主にエンドユーザーであるバイヤーによるものです。マニラと比べると市場規模は小さいですが、エンドユーザーによる住宅需要という意味では需要は安定しています。
■メトロマニラ周辺のタウンシップ開発相次ぐ
Colliersは、デベロッパーはメトロマニラおよびその郊外のサテライトコミュニティ(タウンシップ)の開発を続ける予想です。様々な用途を提案するという点から、単独のプロジェクトと比較すると、タウンシップはよりよいバリュープロポジション(住む、働く、遊ぶ、買い物のライフスタイル)を提案するからです。こういった点から、総合タウンシップは、投資家にとってより魅力的でしょう。Colliersは、デベロッパーはカヴィテ、ラグーナ、ブラカン、パンパンガ、セブ、ダバオといったメトロマニラ郊外のエリアにおけるタウンシッププロジェクトに短期・中期的に力を入れているのではないかとみています。道路網の急速な拡大により、これらの土地の価値が見直されているからです。地方での経済的な機会を生み出そうとする政府の後押しもあり、今後持続することが見込まれます。南に行くと、カヴィテで鉄道および道路拡大プロジェクトが進み、複合開発のコミュニティに再開発できるような物件へのアクセスを高めようとしています。これらのインフラプロジェクトには、最近完成したモンテンルパーカヴィテ高速道路に加え、ライトレールトランジット(LRT)カヴィテ沿線、カヴィテーラグーナ高速道路、北ルソン高速道路および南ルソン高速道路の連結道路などが今建設が進められています。北へ行くと、パンパンガでは、ノース-サウス鉄道プロジェクトの北ルソンセグメントの開発とクラーク国際空港の拡張を政府がコミットしたことを受けて、この地域のタウンシップ関連の投資が盛んです。このような激しい競争の中、デベロッパーは他との差別化を図る必要がでてきます。今では、総合コミュニティ内での病院や学校の建設が目立ちます。また、デベロッパーの中には、娯楽施設やサッカーやウェイクボードといったアウトドアスポーツのためのレクリエーション施設の充実を図ることによって、他との差別化を図ろうとするケースもあります。こういったコミュニティには、スケートパークを抱えるサーキット・マカティ、ウェイクボード施設のあるヌヴァリ、国内初のジェットコースタージップラインが特徴のサンドボックスで知られるアルヴィエラなどがあります。
デベロッパー各社の2018年の動き
■SMプライムは75モールを目標に掲げる・SMDCは地方プロジェクトに約400億ペソを投資
SMプライムは、2017年時点で65軒であったモールを、75軒にまで引き上げる目標を掲げ、今年フィリピン全土に10軒をオープンさせる予定です。すなわち、SMトゥゲガラオ、SMオルモック、SMプリラン、SMレガスピ、SMオロンガポ、SMブトゥアン、SMタグム、SMロクサスシティ、パンガシナン州のSMパウリード、パンパンガ州のSMテラバスタガンです。今年末までに、SMプライムはすべてのモールを合わせて1,100ヘクタール近くの総床面積に到達したい考えです。
また、PMプライムのレジデンシャルブランドであるSMDCは、メトロマニラ郊外への拡大計画の一部として、今年392億ペソ(約796億円)の設備投資をすると昨年後半に発表しました。SMDCブランドは、今年15,000~18,000ユニットを計画しており、SMモールがあるヴィサヤおよびミンダナオ各地、すなわちダヴァオ、セブ、およびイロイロといったエリアでプロジェクトをローンチする予定です。
SMDCは、今年4つのレジデンシャルプロジェクトをローンチさせました。うち一つは、グリーン2レジデンスでSMDCのカヴィテ進出を象徴する30億ペソ(約61億円)のコンドミニアムタワーです。このレジデンスには、カヴィテエリアにある3つの大きな学校に通う2万人強の学生人口を受け入れる目的があります。この22階建ての高層レジデンシャルタワーの鍬入れ式は2018年1月16日、カヴィテ・ダスマリニャスの中心地で行われました。第4四半期にかけて、SMDCはさらに4つのプロジェクトを進行させる予定です。
■アヤラはシェアード・オフィスを2018年4か所でオープン
アヤラランドのシェアードオフィススペースのラインである、クロックインは、現在、3か所で運営されています。スクエア・ワンというブランド名で2016年にローンチしたのちに改名された1200㎡のスペース、マカティ・ストック・エクスチェンジビルに入る400㎡のオフィス、およびボニファシオハイストリートにある1400㎡のハブです。今年、アヤラランドは、クロックインにさらに3600㎡を追加して、4か所で運営予定である。ケソンシティのヴェルティスノースに800㎡、パシッグのアヤラモールズ・ザ・サーティエスに1000㎡、マカティ・メディカルセンター近くに建つ混合利用コンプレックス、およびケソンシティのアヤラノースエクスチェンジに1800㎡です。
(参照:Business Mirror)
アヤラランドの次の代表的な開発物件であるArca South(アルカ・サウス)は、「新ボニファシオ・グローバル・シティ」として2019年までに本格始動予定です。タギッグ・シティの南ルソン高速道路沿い、以前のフードターミナル株式会社の敷地内に位置するアルカ・サウスは、74ヘクタールの広大な土地で800億ペソ(約1625億円)かけて開発されます。
この複合開発の特徴としては、異なる層をターゲットとした3つのレジデンシャルプロジェクト、ビジネスプロセスアウトソーシング会社をターゲットとした6棟のオフィスビルを含んでいます。このオフィスビルには、約15,000㎡の賃貸可能面積を備える予定です。レジデンシャル、オフィス、商業エリアともに2019年の完成を目指します。アルカ・サウスは、サウス・インテグレーテッド・トランスポート・システムと呼ばれる輸送ターミナルを特徴としています。これは、2018年に予定されている民間パートナーシップによるプロジェクトの一つで、ラグーナ、バタンガス方面からの乗客をメトロマニラまでの輸送機関とつなぐものとなります。
(参照:フィリピン・パブリック・プライベート・パートナーシップ・センター)
■ロビンソンランドは、住宅プロジェクトで中国進出
海外での拡大機会を狙い、ロビンソンランドは、2018年の第1四半期までに、中国・成都に132億ペソ(約268億円)相当のレジデンシャル物件を計画しています。これは、8.5ヘクタールにわたるロビンソンランド初の中国本土でのコンドミニアムプロジェクトの第一フェーズとなる、931ユニット分の金額です。さらに第二フェーズとして、870ユニットが追加される予定です。完成すると、アッパーミドルクラスのバイヤーにターゲットをあてた、合計31.5ヘクタールの開発物件となる。
ロビンソンズランドとフェデラルランドの共同プロジェクトである、アクシスレジデンスの第2棟は、成長目覚ましいビジネスエリアであるマンダルヨン市のパイオニア通りのスカイラインを変貌させるでしょう。42階建てのレジデンシャルタワーの基礎工事が2017年6月末から始まっています。
また、アカシア・エスカラデスビルBの鍬入れ式も2017年8月初めに行われ、ロビンソンズはパシッグ市インドゥストリア通りの重要プロジェクトの幕開けを祝いました。ロビンソンズランドの役員およびロビンソンズコミュニティのセールスディレクターが参加し、鍬入れ式は、ロビンソンズコミュニティブランドのトレードマークとなる高品質&低価格なコンドの建設開始を意味することで、当該プロジェクトの建設の重要な一節となりました。
イーストウッド市からたったの5分、2019年に完成予定のアカシア・エスカラデスは、パシッグ市のアマング・ロドリゲス通りと交差するインドゥストリア通りの閑静なエリアに位置する現代フィリピン風の中層レジデンシャルです。アカシア・エスカラデスは、マニラの東エリアの商業ハブの中心地に住むという便利さを持ち合わせながらも、穏やかな憩いの場所を提供します。1階には、ロビンソンズスーパーマーケット、銀行、レストランおよび薬局といったリテールスペースも設けているため、利便性も抜群です。
■センチュリープロパティーズはファーストパークホームズの建設に着手
BDO銀行との開発資金およびエンドユーザーファイナンスで10億ペソ(約203億円)の取引に署名し、センチュリープロパティーズは今年、低価格帯の住宅ブランド、ファーストパークホームズをローンチしました。このプロジェクトは、ファーストパークホームズ・タンザと呼ばれ、26ヘクタールにわたる、合計2,877ユニットで構成されます。950ユニットが第一フェーズとして2018年第1四半期に着手され、うち878ユニットは第3四半期に引き渡し、残りの72ユニットは第2四半期に工事開始し、第4四半期に引き渡しされる予定です。
■メガワールドのザ・アッパー・イーストの工事開始
メガワールドは、バコロドにある、バコロドームルシア製粉会社跡地34ヘクタールに、ザ・アッパー・イーストの建設に着手することで、地方のタウンシップポートフォリオの拡大準備をしています。プロジェクトの最初のレジデンシャル開発物件はコンドミニアムで、今年販売開始となります。タウンシップの一部として、ビジネスプロセスアウトソーシング棟、モール・商業地区、観光、レジャー施設、および公園なども備えています。
注:本文中の日本円表記は、本文執筆時の為替レート(1ペソ=約2.03円)で換算した参考値です。
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